Phnom Krom  プノム・クラオム

 

トンレ・サップの北端ちかくの湖岸にある小山、プノム・クラオム(「クロム」ではなく「クラオム」が実際の発音に近い)は約140メートルの高さを持ち、平原の只中では大変に目立つ。メコン川からトンレ・サップ川を遡り、トンレ・サップ湖をわたって十二世紀にアンコールを攻めたチャンパも、この小山を目印にしたことだろう。その山上に立つヒンズー教寺院は、9世紀末にヤショヴァルマン一世によって建てられた。プノム・バケン、プノム・ボックと同様のバケン様式で、ほぼ同時期の建設である。ラテライトの周壁の中に、砂岩でできた祠堂が三つ、南北方向に並んでいる。正面は東である。いずれも上部は倒壊しており、またその表面はトンレ・サップ湖畔の強風や雨に晒されて風化と剥離が進んでいる。祠堂手前(東側)には四つの建物が南北方向に並んでいるが、内側の二つが砂岩、外側の二つがラテライトでできている。これらの建物の壁面には格子状に小さな穴が開いており、通気孔の役割を果たしたと考えられる。周壁内側に沿って、ラテライトの細長い建物が、祠堂群を取り巻くように立っている。
この遺跡を見て私が真っ先に感じたのは、「石がゆっくりと溶けていっている」ということだった。熱帯の過酷な自然の中で、激しい風雨と強い日射に繰り返し晒されてゆっくりと溶けていく石の寺院。プノム・クロムばかりではなく、やわらかい砂岩で作られたアンコール遺跡は、みな同様の危機に直面している。
寺院自体もさることながら、丘から見るトンレ・サップの光景はすばらしい。この丘からトンレ・サップの持つ、乾期と雨期のふたつの顔を見ることを強く勧める。雨期には周囲は水没して湖の一部となり、丘はまるで島のようになる。乾期には広大な陸地が現れ、湖の湖面をみることすらむずかしい。
山上へは、まず急なコンクリートの石段を登り、次に山腹の南側を回りこむように登っていく。この間トンレ・サップの眺めがすばらしい。更に石段を登ると東西に長い山頂の東側に出る。ここには現代の仏教寺院がある。遺跡はその西側の最も高い場所にある。プノム・バケン、プノム・ボック同様、内戦時は要塞化されていた。アンコール周辺の地図を見ると多くの堤防道の痕跡が認められるが、シェムリアップとプノム・クラオムを結ぶ堤防道は、その代表的なもの
で、現在も幹線道として使用されている。

上の写真で、右の円の部分が遺跡、左側の円内は現代の仏教寺院。写真左方向が南側に当たる。
 

from Phnom Bakheng(left).from dike to Tonle Sap(center).Flying over Phnom Krom(right).
プノムバケンから南方はるかに見るプノムクロム(左)。シェムリアップからトンレサップに向かう堤防道から見る(中)。上空から見る。細長い頂上部の右手(西側)に遺跡が、その左に新しい仏教寺院が見える。雨期には周囲は展望道を除いて水没する (右)。
 
Phnom Krom from in dry season(left). from waterway to Tonle Sap in rainy season(center).
乾期(5月)に南側の堤防道から見る。雨期には水路となるくぼ地は、完全に干上がっている(左)。
雨期(11月)に南側から見る。上の写真に見えるくぼ地が水没して水路となる。そこを航行する船から見る(中)。
Ruins from east. There are two pair of brick and sandstone buildings in front of 3 towers.
東側から見た寺院。左右にレンガと砂岩の建物がペアになって並び、奥に3つの祠堂がある。

 
 
Sandstone building(left) and brick building(right).
正面に向かって右側の建物。左(内側)は砂岩で、右側(外側)はレンガでできている。手前にはラテライトの周壁の一部が見える。

 
Sidewall of sandstone building(left). Sidewall of sandstone building(center).
正面に向かって左側の砂岩の建物の北面(左)。通気孔が多数空けられている(中)。
   
Small hales on the wall of brick building for ventilation).
等間隔で開けられた穴は通気孔であり、窓の役割も果たしていた。
 
Detail of sadstone tower.
遺跡は崩壊がはげしい。

 
 
Tonle Sap from the top of Phnom Krom.
遺跡から見るトンレサップ。手前にはラテライトの周壁が見える。

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