12世紀にジャヤヴァルマン七世によって、ジャヤタターカの中央に浮かぶ正方形の島の上に建設された。建築様式はバイヨン様式に属する。他の遺跡とは違い、中心となるのは池そのものだ。方形の池の中心には円形の基壇の上に建てられた塔堂があり、二匹のナーガが基壇部を取り巻いている。またヒンズー説話に登場する聖なる馬ヴァーラハの石像が、祠堂東側の池の中に立っている。中心の大きな池のまわりには四つの小さい方形の池を配し、これらの池にも小さな祠が付属している。それぞれの池の背後に迫る森の中にはラテライトでできた小さな祠がある。ヒンズー教説話を具象化した説話的・物語的空間の創造という、アンコール期の宗教施設の役割を最も濃厚に感じ取れる空間だ。中央の池は乾期と雨期では景観が一変する。雨期には満々と水をたたえ、その水面に中央祠堂が影を落とすが、乾期には水は干上がり、中央祠堂に歩いて上がっていけるようになる。ネァック・ポアンは物語的・説話的空間として最高の遺跡のひとつだ。目に見えるものといえば五つの方形の池であり、幾何学的な美しさを感じるものの、驚異的な造形というほどではないし巨大でもない。しかし控えめに配置された小彫刻群が物語空間の効果を高めている。昂揚ではなく抑制が、発散ではなく回帰がこの場所にふさわしい。ものを考えるにいい場所だ。 |