![]() アンコール・ワットの建設前の、11世紀末から12世紀初頭にかけて作られたヒンズー教寺院である。アンコール・ワット様式の建築で、アンコール・ワットよりも多少小さいが、それでも有数の大規模遺跡である。環濠は幅45メートル、周囲4200メートルもあり、その内部にアンコール・ワット同様、三重の回廊と十字回廊を持つ。最も外側の回廊は東西181メートル、南北152メートルの規模を持つ。その内側の回廊の東側には一対の経蔵が、南側には外側の回廊との間にすっぽり納まるように二つの回廊状の建物があり、東西の基軸に対する平面構成上の対称が破られている。 寺院の平面構成は基本的にアンコール・ワットに似ているが、内側に向かって高まっていく山岳型寺院ではなく、平面展開である点が大きな違いだ。また一般的なクメール寺院同様、東が正面になっている。回廊の窓に見られる連子は、他に見られないほど太く大きい。また全体に壁面装飾がほとんどなく、重厚な雰囲気がある。デヴァターの姿もほとんど見ることがない。デヴァターの有無が寺院の印象にずいぶんと大きな影響を与えていると実感する。 寺院の東側からは400メートルほどの長さの参道が続いていて、その西半分は歩くことができる。東半分はヤブの中だ。参道は部分的にクメールアーチを持つ橋になっていて、下を小川が流れている。またところどころにプレア・カンの参道脇に見られるような境界石が倒れているのが見える。 |
参道の東端には東西約1500メートル、南北約1000メートルのバライが接している。このバライは水が涸れており、その内部は耕地になっている。バライの中心には祠堂があったが現在はほとんど消失している。バライの堤防上の南東角にはプラサート・コン・プルクと呼ばれる遺跡がある。遺跡はラテライトのピラミッド型で、周囲にはラテライトの周壁がある。祠堂北側には砂岩のテラスがある。バライの南側堤防の中央付近から南側に150メートルほど離れた地点にはプラサート・チュレイと呼ばれる祠堂がある。 遺跡はプノム・クーレン丘陵の南東に位置しており、かつてはアンコールの中心部と王道で結ばれていた。環濠北西端付近にはアンコール地域の寺院建設に用いた良質の砂岩の石切り場(オ・トマ・ダップと呼ばれる)もある。 ベン・メリアは失われた古代都市とでもいうような雰囲気の漂う魅力的な遺跡だ。遺跡の大半は森に飲み込まれていて歩くこともままならない。繁茂する樹木のために、あたりは暗く重々しい雰囲気が漂う。崩れかけた暗い回廊内を歩くのは不気味でもあり、強い印象を残すだろう。最近訪問者が増えているとはいえ、いまだに残存地雷があり、それも思いもかけない場所に埋設されていることがある。アンコール・ワットやアンコール・トムあたりとは安全性の面でまったく違うことを肝に銘ずるべきだ。 ![]() |