Bayon バイヨン

 
バイヨンは、都城アンコール・トムの中心に位置する。その都城における位置や、周壁を持たない(正確にはアンコール・トムの城壁がバイヨンの周壁でもある)ことなどからも、バイヨンが特別な寺院であることがわかる。12世紀後半から13世紀にかけて、ジャヤヴァルマン七世からジャヤヴァルマン八世に至る3人の王の在位中に建設され、改変と増築が重ねられた。四面に人面(観世音菩薩といわれる)のある塔堂が特徴的なその建築様式(バイヨン様式)は、ジャヤヴァルマン七世によって建てられたタ・プローム、プレア・カン、バンテアイ・チュマール、アンコール・トム、ネアック・ポアン、タ・ソムなど、多くの寺院に共通して見られる様式である。
構造は基本的には二重の回廊と、その中心に位置する高さ43メートルの中央祠堂からなるが、増改築が行なわれたために複雑な構造になっている。第二回廊の上部には、中央祠堂とその周囲に配置された16の塔堂を巡るテラスがある。正面である東側入口には広い砂岩のテラスがあり、テラスの両脇には聖池がある。ここから振り返って東を見ると未舗装の直線道路が続いているのが見えるが、この道は死者の門へと続くアンコール・トム内の幹線道路のひとつだ。テラスを横切って第一回廊を過ぎ、内部に入ると、その内側には第二回廊があり、更に上部テラス、中央塔へと続く。バイヨンはなかなか複雑な構造になっているので、できれば平面図を手に歩きたい。構造が複雑なのは時代時代に設計が変更され追加されたからで、下から上部の周回テラスに上る途中にその痕跡を見ることができる。

バイヨンの魅力はまず、岩山のような圧倒的な量感にある。アンコール・トム南門をくぐってアンコール・トム内部の深い森の中を走り、その先にバイヨンの黒々とした姿が見えてくる瞬間は、なかなかドラマチックだ。その複雑なかたちは古代の生物をも思わせる。外側回廊の壁面に刻まれた浮き彫りと、多数の観世音菩薩とされる顔を刻んだ人面塔は、どちらもすばらしい芸術作品である。アンコール・ワットがシャープな線で構成された肉薄の作品であるとするならば、バイヨンは手書きの線で構成された肉厚の作品だ。
見るべきものとしてはまず、第一回廊のレリーフがある。観世音菩薩の顔だといわれる人面塔がこれに次ぐ。第一回廊のレリーフは長大なので、絞るなら東面南側と南面東側だろう。第二回廊付近を中心として、成立過程に由来するその複雑な建物の構造を探って歩くのもおもしろい。


Temple
寺院


Face Tower
四面塔


Devatas
デヴァター


Bas-relief
第一回廊のレリーフ


Bas-relief A B C D E  F
レリーフの解説

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