Angkor Wat アンコール・ワット


 

 

アンコール遺跡群の中で最大級の規模を誇る、アンコールを代表する寺院遺跡。スールヤヴァルマン二世により、12世紀の前半から半ばにかけ造営された。ヒンズー寺院として建てられ、王の死後は霊廟となり、のちに仏教寺院に衣替えした。
全体の大きさは東西1500メートル、南北1300メートル。周囲の環濠は幅190メートル。正門にあたる西塔門から東に伸びる西参道は長さ350メートル。途中 の両脇には経蔵と聖池がある。
西参道東端からは十字型テラスを経て第一回廊に至る。寺院の中心部はピラミッド型に順次高まって行く第一、第二、第三の三重の回廊と、十字回廊、二組の経蔵、それに中央祠堂からなる。最上部の第三回廊の四隅には尖塔があり、中央には最大の中央祠堂の尖塔が立つ。その高さは地上65メートル。かつては第二回廊の四隅と西塔門にも尖塔があったが、いずれも崩落した。


▼アンコール・ワットを詳しく観察する

West Gopura 西塔門 アンコール・ワットの正門にあたる。両翼230メートルもある。
Cruciform Terrace

テラスと基壇

西参道と第一回廊を結ぶ十字型の広大なテラス。
East Gate 東門 裏門にあたる大きな門。
South Gate 南門 外周壁上の南側に位置する小さな門。
North Gate 北門 外周壁上の北側に位置する小さな門。
1st level 第1回廊 精緻な浮き彫りで有名。3つの回廊のうち最も外側にある。
Bas-reliefs 第1回廊のレリーフ 「乳海攪拌」など有名な浮き彫りが壁面全体に描かれている。
Cruciform Cloister 十字回廊 第一回廊と第二回廊を結ぶ田の字型の回廊。
2nd level 第2回廊 第一回廊の内側にある。デヴァターの浮き彫りが美しい。
3rd level 第3回廊 最も内側にある方形の回廊。
Pattern at 3rd level 第3回廊基部の文様 第三回廊を支える基部側壁に見られる文様。
Pattern 壁面や柱の文様 アンコール・ワット全体に見られる代表的な文様。
Devatas at West Gate 西塔門のデヴァター 西塔門内陣側壁に見られるデヴァター。
Devatas at 2nd level 第2回廊のデヴァター 第二回廊内陣側壁に見られるデヴァター。
Devatas at 3rd Level 第3回廊のデヴァター 中央祠堂の周囲の壁面に見られるデヴァターの浮き彫り。
Central Towers 中央尖塔群 高さ65メートルの中央塔を中心に5つの塔が現存している。
Library 経蔵 アンコール・ワットには3組の経蔵がある。
Moat  環濠 寺院の周囲を幅190メートルの環濠が囲んでいる。

関連項目
カンボジア国旗に現れるアンコール・ワット




 
付録1:アンコール・ワットの魅力
 
 
(1)巨大さと壮麗さ
その巨大さと壮麗さは、特に事前の学習がなくとも感じ取れるアンコール・ワットの重要な要素だ。西側の環濠を渡り始めるところから中央祠堂までの水平距離は約750メートル。第一回廊の総延長は800メートルに及ぶ。第一回廊を見てから第三回廊まで行って帰って来るだけで、3キロメートルほども歩くことになるわけだ。半日をここで過ごしたら、実際にはどれほどの距離を歩くことになるだろうか。
アンコール・ワットは巨大ではあるが、水平の広がりを強調しているために垂直方向の大きさを実感しにくい。しかし中央祠堂の頂の高さ65メートルはアンコール遺跡中で最も高いことを、アンコール・ワットの前に立った時に思い出してほしい。高さだけでみると、アンコール・ワットはタージ・マハル、ティオティワカンの太陽のピラミッド、日本の国会議事堂とほぼ同じだ。
(2)精緻で繊細な細部
アンコール・ワット(のみならずアンコール遺跡一般)の細部はすばらしく精緻で繊細だ。ミリ単位で薄く薄く刻まれた文様が寺院の柱や壁面を覆っている。第一回廊の浅浮き彫り(バス・レリーフ)も、遠くから全体を見るだけではなく、接近してみると思いもかけない細部に出会う。柱や壁面の文様のモチーフは主として植物であり、そのために静的な整った印象を受ける。顔を近づけて壁面の文様を見つめている様子を他人が見たらユーモラスに違いないが、実際に虫眼鏡が必要なほどの細部が存在するのがアンコール・ワットの驚異である。壁面装飾に隠された意味を追求するだけで、ひとりの研究者の生涯が泡沫(うたかた)のように過ぎていくにちがいない。
 
   
(3)均整のとれた構成
これは私だけの感覚かもしれないと恐れるが、アンコール遺跡の均整のとれた構成から感じられる、ある種の快感がある。アンコール遺跡を訪れる時、訪問者の動線は、基本的に左右対称の寺院の中心線上にあり、アンコール・ワットではその上に配置された塔門、参道、いくつもの階段などをたどって、長い旅の末に中央祠堂にたどりつく。その間、訪問者は非常に安定した、計算されつくした美意識によって統率された空間を通過していると感じる。西洋の教会建築や日本の寺院建築にも同様の印象はあるが、これほどの規模で実現されたことはないに違いない。また全体を通じてデザイン上の約束が厳しく守られていて、基本的なパターンが繰り返される。屋根の表面の文様も建物の全体を通じて一定している。
(4)躍動する物語空間
アンコール・ワットはドラマチックな空間でもある。特に第一回廊の壁面はすべて宗教説話を表したレリーフで飾られている。これを単なる建築だと見ることはおそらく間違っている。まずアンコール・ワットそのものが当時の宗教観宇宙観を目に見えるようにしたものだ。建物のかたちをした思想であり歴史本であり説法だったのである。戒律や戒めと共に、娯楽的な要素すら含んでいたかもしれない。

付録2:ここから見ると美しい

アンコール・ワットという建築を見て楽しむポイントは無数にあるが、個人的に好きな地点を図示してみた。一般的には南面が光が回りやすく、きれいに見られる。


top