(1)巨大さと壮麗さ
その巨大さと壮麗さは、特に事前の学習がなくとも感じ取れるアンコール・ワットの重要な要素だ。西側の環濠を渡り始めるところから中央祠堂までの水平距離は約750メートル。第一回廊の総延長は800メートルに及ぶ。第一回廊を見てから第三回廊まで行って帰って来るだけで、3キロメートルほども歩くことになるわけだ。半日をここで過ごしたら、実際にはどれほどの距離を歩くことになるだろうか。
アンコール・ワットは巨大ではあるが、水平の広がりを強調しているために垂直方向の大きさを実感しにくい。しかし中央祠堂の頂の高さ65メートルはアンコール遺跡中で最も高いことを、アンコール・ワットの前に立った時に思い出してほしい。高さだけでみると、アンコール・ワットはタージ・マハル、ティオティワカンの太陽のピラミッド、日本の国会議事堂とほぼ同じだ。 |
(2)精緻で繊細な細部
アンコール・ワット(のみならずアンコール遺跡一般)の細部はすばらしく精緻で繊細だ。ミリ単位で薄く薄く刻まれた文様が寺院の柱や壁面を覆っている。第一回廊の浅浮き彫り(バス・レリーフ)も、遠くから全体を見るだけではなく、接近してみると思いもかけない細部に出会う。柱や壁面の文様のモチーフは主として植物であり、そのために静的な整った印象を受ける。顔を近づけて壁面の文様を見つめている様子を他人が見たらユーモラスに違いないが、実際に虫眼鏡が必要なほどの細部が存在するのがアンコール・ワットの驚異である。壁面装飾に隠された意味を追求するだけで、ひとりの研究者の生涯が泡沫(うたかた)のように過ぎていくにちがいない。
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