特定非営利活動法人メコン・ウォッチのインターン、山田真司さんにNGOの選び方について書いていただきました。NGO活動に興味はあるが、具体的な行動を起こせない人が少なくないのではと考えたからです。分かりやすく書かれた文章なので、NGO選びの参考にしていただければ幸いです。(波田野)


このページでは、カンボジアの人々のために、あるいは、人々とともに活動したい!と考えてらっしゃる方に、いわゆるNGOというものがいったいどういうもので、どのように自分にあったNGOを探せばよいのかを、できるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。
とはいったものの、この文章を書いている当の本人はベテランNGO職員でもなんでもなく、とあるNGOの一インターンに過ぎません。従いまして、正直に申し上げてNGOに関する知識も心もとないものがありますので、ここでは主に、実際の体験に基づいた、あくまで素人によるNGO概説だと思っていただければ幸いです。

はじめに:NGOは大きな「くくり」
皆さんはNGOについてどのようなイメージ、印象をお持ちでしょうか。「途上国」の人々と共に汗を流す姿を想像する人もいるかもしれませんし、「あんなの自己満足のためにやっているだけだ」、と思っている方もいるでしょう。
ここでまず注意したいのが、そもそもNGOというくくりで話をすることの危うさです。NGOとは、その団体の属性を示しているにすぎません。NGOと一口に言ってもその内実は千差万別ですし、その数も膨大です。NGOは固有名詞でもなんでもなく、非常に大きな「くくり」なのです。

1  正しいNGOの選び方
では、山ほどあるNGOの中から自分が共感できるNGOを探すには、いったいどのようなことに気をつける必要があるのでしょうか。私としては、当たりまえのことなのですが、究極的にはその団体のビジョン(活動目的)に共感できることがどうかに尽きると思っています。
企業と違い、それぞれのNGOが思い描く目標は一様ではありません。
主なNGOの一覧は国際協力NGOセンター(JANIC)が出版している『国際協力NGOダイレクトリー2004』に載っていますので、まずはその団体が何のために存在し、活動をしているのかをチェックすることが第一歩だと思います。
先にNGOの掲げるビジョンは一様ではないと言いましたが、一方で、「貧困を削減する」といった大きな目標の下に活動をしている団体は少なくないでしょう。カンボジアが抱える「貧困」に取り組む団体の数も少なくないはずです。
そこで、ビジョンに共感できる団体が複数ある場合、どのような基準で自分に合うNGOを探せばいいのかという問いに対し、大きくわけて3つの基準を示したいと思います。
 
基準1:どのような考えのもとに活動を行っているのか
分かりにくい書き方かもしれませんが、要するにNGOは特定の宗教とつながりを持っていたり、政治的に偏っているものがあります。NGOといっても決して「中立的」ではありません。
NGOはすべて反体制的と考える人もたまにいますが、それも誤りです。体制的なNGOもあるし反体制的なNGOもあるし、政治性を帯びることを嫌うNGOもいます。NGOがどのような立場に立っているのかという点は、当然のことですが極めて重要なポイントだと思います。

基準2:どのような活動をしているのか
NGOの活動を、便宜上、ここで大胆にも分類してしまうと、以下の3種類になります。

(1)緊急援助型NGO
その名のとおり、海外で災害等が起こった際に、物資を供給したり、救援活動を行ったりします。

(2) 開発型NGO
「途上国」の人々に対して教育の機会を与えたり、井戸などのインフラを整備したりと、(1)同様、「良いことをもっと(Do More Good)」行うことを目指すNGOです。

(3)政策提言型NGO
人権や環境を守るべく、グローバルなキャンペーンを行ったり、「先進国」の政府や援助機関に働きかけたりするNGOです。その多くは、(1)、(2)とは逆に「Do No Harm (悪いことはしない)」というスタンスで活動されていると思います。

(1)、(2)の活動を行っているNGOのほうが認知度は高いのかもしれませんが、(3)の活動を行っているNGOも少なくありません。また、これら3つの分類に明確に分けられない団体もあります(例えば農村開発をしつつ政策提言を行うNGOなど)。
どの活動が一番いいというわけではなく、それぞれに面白味や、やりがいがあると思いますので、問題意識に従って選択すればよいと思います。

基準3:どのような組織か
あるNGOで、「係長」、「部長」といった肩書きが用いられていて驚いた覚えがあります。私は個人的には、NGOはムーブメントであり、問題があるからNGOがあるのであって、NGOがあるから問題に取り組むのではないと思っています。従って、企業みたく組織としてがっちり固まっているNGOには、私はあまり魅力を感じません。
「途上国」のためというよりは、組織の存続のためにやっていることが少なからずあるのではと邪推してしまいます。やや大げさなかもしれませんが、組織として出来上がってしまっていたら、「いままで取り組んでいた問題が解決したから人員を減らす」ということもおそらく難しくなるのではないでしょうか。
この意味で、組織の大きさや伝統の長さは、NGOを評価する指標としては適切ではないと思っています。問題ベースの、フレキシブルな活動をしているか、どのような実績があるのかを見極める必要があります。

以上、駆け足でNGOの説明と、NGOの選び方を概説しました。残りのスペースでは、具体的なアクションのとり方と、最後に私の個人的意見を述べさせていただきたいと思います。

2 NGOへの第1歩
上に挙げたような基準をもとにNGOを探せといっても戸惑ってしまうかもしれません。実際にNGOに関する信頼できる情報を手に入れるにはどうすればいいのでしょうか。こう言ってしまっては元も子もないのですが、「実際にその団体を訪問し、職員の話を聞く」ことが一番確実だと思います。
ウェブサイトや文字だけの情報でその団体の特徴を見極めることは困難です。それに、NGOの多くは小規模であり、必然的にそのNGOの魅力はそこで働く「人」に大きく左右されます。興味を持ったら、メール等で連絡して話を聞きにいく、それができなければ、その団体が主催するイベントに参加するといいと思います。なお、NGOが行う講演会等のイベントの情報は、「国際協力マガジン」というメールマガジンが一番詳しいと思います。
もうひとつ、その組織の財源、スポンサーを聞くことで、その特徴が分かることがあります。日本のNGOは、財団や政府からの補助金・助成金を主な財源としているところが大半です。財源が極端にどこかのスポンサーに偏っていれば、基本的に、そのNGOのスタンスもその財団の立場に近くなってきます。
例えば、政府からの助成金が多ければ、政府寄りのNGO、言い換えれば政府の下請け的なNGOと考えて間違いはないでしょう。
なお、財源等の組織の情報を公開していない、しようとしないNGOは、それだけで選択の対象外だと考えていいと思います。

3 最後に〜私の選択〜

私はインターン先を選ぶ際、

(1)自分の関心のある地域に根ざした活動をしていること、
(2)モノやお金の供与ではない活動をしていること、

を基準にし、政策提言型NGOに通うようになりました。結果的にこの選択は大正解であったと感じています。(1)については特に説明する必要はないかと思いますので、(2)について、若干付け加えたいと思います。
それは、あるNGO職員の方の話の一節でした。「村にトイレを作りに行ったが、私自身、現地に駐在していてトイレを作る必要性を感じていなかった。事業の中止を東京の事務局に訴えたのだが、結局作ることになってしまった」。この言葉を聞いて、NGOに対する疑問の念を抱いたのが大きなきっかけでした。
当時、なぜ、トイレを作るか作らないかという決断を、受益者たる現地の住民ではなく東京の職員がしているのか。その村だけにトイレを作ってしまうことで、現地社会になんらかの歪みが生じてしまうのではないか。よそ者が現地政府の代わりに、トイレを作るということまで行う必要があるのか。そのような援助を続けていて、その国はいつ自立できるのか、といった疑問が、頭の中を駆け巡ったのを覚えています。
これらの思いが、「貧しい現地の人々がかわいそうだから助けてあげる」NGOではなく、政府が果たすべき役割を果たさず、人権を無視し、人々の生活を破壊することのないよう働きかけるNGOに、私を向かわせました。


以下、おまけとして、よくある質問に対して私なりに回答を試みました。皆さんからご質問をいただければ可能な限り回答していきたいと思いますので、なにかありましたらお気軽に私までメールください。

1)地方に住んでいて、簡単にNGOの事務所を訪ねることができない人はどうすればいいか
地方にも国際的な活動をしているNGOが多くありますが、やはり東京に集中していることは事実です。NGO選びの際、直接事務所に行って話しを聞くことができなければ、その団体が出している季刊誌やパンフレットを送ってもらったり、出版物を読んだりすれば、かなりの程度はそのNGOの活動を理解できると思います。時間が許すならば、毎年10月に日比谷公園で行われる国際協力フェスティバルに参加したり、NGOのパンフレット、出版物を閲覧できるJANICの事務所を訪れてみるといいでしょう。また、たいていのNGOは翻訳など、直接事務所に行かなくてもできる仕事を抱えているので、そういった仕事を通じて活動に貢献できると思います。

2)NGOに関わる前とあとで自分はどう変化したか
考え方が大きく変わったと思います。インターンとしての活動を通じ、なにげなく暮らしていては得られない視点・考え方を学べたことは、私の大きな財産となっています。今のNGOに関わらなければ出会わなかったであろう本や言葉もたくさんあります。具体的に書くときりがないので割愛しますが、世の中を変えるだけでなく、自分自身を変える場として、NGOというのは刺激的な場だということは断言できます。

3)NGOについて知るためのわかりやすい参考書紹介
NGOについて知りたいのであれば、JANICが発行しているダイレクトリで十分です。そのなかで興味を覚えるようなNGOがあれば、パンフレットを請求するなどすればよいでしょう。NGOを一くくりにして、過大評価したり、過小評価するような書籍はどうかと思います。個人がNGO一般を評価することはおそらく不可能に近いと思うからです。
NGO全般についてではありませんが、「開発」とは何かを考える際に不可欠な視点を与えてくれるものとして、赤坂むつみ氏著『自分たちの未来は自分で決めたい』日本国際ボランティアセンターをお勧めします。

4)NGOについての基本情報のえられるウェブサイト
JANICのサイトでNGOについての基本的な情報は手に入ります。その他、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)の田辺有輝さんが管理している、Organic Style
http://www.organic-style.net/index.html
は、NGOでのキャリアを考える方にとってうってつけだと思います。

5)NGOに関わって、「これは自分の求めているものとはちがう」と思ったらやめてもいいの?
もちろん可能です。ボランティアとして関わる分には、来る者拒まず、去る者追わずだと思います。

6)仕事としてNGOで働くにはどうすればいいの?
こうすればNGO職員になれる、というような道はないと思います。実際、職員の方の経歴は様々です。スタッフではない私があえて言うとすれば、「回り道はしない」、ということだと思います。一旦、問題意識を持ったのなら、解決に向けて体当たりしていく行動力がなければ、なかなかスタッフとして働くことは難しいのではと思っています。

7)一般論としてNGOでの人間関係には難しいところはある?
同じ目標を共有している人の集まりですから、たいていどこの職場に行っても一人くらいはいる、自分と「合わない」人というのは少ないと思います。ただ、たいていのNGOは小規模で、基本的に毎日同じメンバーで仕事をするわけですから、お互いに気持ちよく仕事をするということを、おそらく他の職場以上に意識する必要があると思います。

8)NGOと会社の違いは?
当然のことながら、企業は利益を追求し、NGOは問題解決を目指します。それに伴う両者の違いも山ほどありますので、NGOの全体像を企業との比較で理解することは適切だと思いません。なかには企業的なNGOもありますが、企業とNGOとは「別物」と考え、NGOはNGOとして捉えたほうがいいのではないでしょうか。

9)NGOに関わると時間などで拘束される?空いた時間でできるようなNGO活動はある?
ボランティアとして働く限り、拘束はまったくありません。空いた時間でできる仕事もたくさんあります。週1日だとか、自宅でのみのボランティアでもまず断られることはないでしょう。ですが、ボランティアとしてでもインターンとしてでも、そのNGOに深く関われば関わるほど、勉強になることが多いというのが私の実感です。
 

文責 山田真司(特定非営利活動法人メコン・ウォッチ インターン)

Website: http://www.mekongwatch.org


戻る